今までも、手作りでは難しい幾何柄や、インダストリアルなデザイン は、3DCADで制作してきました。 それに対し石肌などのナチュラルな素材は、手作りにこだわり、細かな表情やニュアンスまで再現することを大切に、現在も制作しています。
しかし、今後より必要になってくるであろう3Dでの対応を、有機的なデザインにおいても考えています。まずは試作やツールの使い方を学びつつ、3D化を一部仕事に取り込んでいけるよう、新たな取組をしております。
●手書き白黒画像からデジタル3Dデータへ
社内の棚に眠っていた数十年前の手書きの白黒壁紙デザイン画を、3Dのテクスチャーのストックとして、再利用するための試作をしています。使用しているのはZbrushという3Dソフト。CADソフトとは違い粘土をこねるように有機的な3Dモデルを作れる、特殊なモデリングソフトです。ゲームからプロダクトまで幅広い領域で使われています。このソフトの機能を使えば、白黒濃淡画像からすぐに3Dテクスチャーをつけることができます。
・手書きの壁紙デザインを3D化する工程
- 白黒手書きデータをスキャン
- フォトショップで濃淡を調整
- Zブラシに画像を読み込んで3Dの凹凸として描画
(左)手書きの白黒デザイン画(右)左の画像をZbrushに取り込んで面に配置
例えば、ハケ目の手書き濃淡データを読み込むと、上の画像のようなリアルなハケ目3Dテクスチャーがすぐに再現できます。白黒の濃淡が高低差の数値として置き換えられているのです。 深度やスケール、また柄の乗算も簡単に調整できます。
そのため、同じ濃淡データであっても 全く印象の違うアイデアを候補として複数作り出せます。試しに先ほどのハケ目柄の深度を+から−に振って見ます。すると、盛り上がっていた部分が今度は盛り下がり、ハケ目の擦れが鋭く硬い印象の柄に変わります。
このようにアナログの手法とはまた違ったアプローチでアイデアを展開していけます。
この手法の便利な点は、写真からも3Dテクスチャー を 抽出できるところです。 下のような石材の写真を加工した濃淡データを作り、 スタンプのように3Dのピースの上に押していきます すると、実際の石材と雰囲気の近いテクスチャー を再現できます。
●3Dスキャナーから3Dデータへ
画像ではなく石材そのものを3Dスキャナーで読み込み、 3Dモデルへ使用できるか、という試みもしています。
サイズは大きくはありませんが社内に3Dスキャナーがあります。 小さいものであれば石材をスキャンし、濃淡ではなく そのままリアルな3Dデータとして石材の凹凸を読み込みます。 当然、読み込まれたデータは深度変更等調整が容易にできます。
またこれらのデータは、弊社にある切削機などで出力し、 木材や石膏などの現物に(柄によりますが)再現可能です。 これらを活用することで、 テストピースの制作や、柄の深度変更、雰囲気確認など、 これまでに比べて臨機応変に対応していけるようになると期待しています。
●デジタルとアナログの活用
デジタルは、手作りでは難しい、後からの深度変更やスケール感の調整が、 簡単にできてしまうのが魅力の一つです。3Dならではの偶然性を利用して、手作りでは出てこないデザイン案が見つかるのも楽しい点です。
とはいえ、Zbrushは大変データが重くなるソフト。Zbrushのみで大きな サイズを作ってしまうと、扱いが難しいデータになる一面があります。 更に、アナログでは一瞬でできていた僅かな修正が、意外にも時間がかかる、 ということも。
手作りの良さとデジタルの良さ、補いながらどちらとも活かすことで 更に広く表現をしていけるのでは、と思います。 3DCGプリンター、切削機、スキャナー、モデリングソフト・・・等使用用途を広げて、皆様との商品開発をスムーズに進めていけるツールとなるよう 活用方法を考えて参ります。
また、今後は、これらのテクスチャーを どなたでもお使いいただけるよう、販売も行っていく予定です!