ascal design にちにちデザイン談

デザイン活動をしながら日々思うことをスタッフやつながる仲間が気ままに綴ります

エクステリア展レポート

今年の春、4月に開催されたエクステリア展。

アスカルでは外観コーディネートやデザイン、各部材・配色のトレンドを考える際の参考として毎年欠かさず足を運んでいる展示です。
開催から2ヶ月経ちましたが、その中で展示全体の傾向やトピックを3つご紹介します。

 

 

1.  ブラックが増加

「トレンドはグレイッシュ」という年が例年続いていましたが、今年はそれが少し変わってきた印象。特にブラックが戻ってきた感覚がありました。
いつもより大きい面積でドンと使われていたり、オールブラックのコーディネートも複数見られ、存在感があります。

 

玄関周りやカールーフなど大型のものから水栓・宅配ボックスなどの小さめアイテムまで、ブラックがよく目に入ってきました。


 

2. グレーのコーディネートは継続

とは言え、グレーのコーディネートが中心なのは変わらず。
外観やアプローチなど、あらゆる場所でベース色となるのはグレーが多かったです。

 

床材やアウトドアファニチャーはグレー系がメイン。

 

外観やファサードもグレー基調。

ただ、ここ数年明るいライトグレーが中心だったのが、やや中間色寄りのグレーになってきたように思います。ブラックが使われていることもあり、全体的にほんの少し暗めのトーンになったように感じました。

 

また、毎年LIXILの商品やブースには注目しているのですが、グレーのガラスを新しく発表。

 

この「グレー系のトータルコーディネート」は「ダスクグレー」というカラーを持っているからこそ提案できるものだなーと強く感じました。この色自体は数年前にサッシや格子の新色として発表されたものですが、今回はカーポートにダスクグレーを採用(↓)

 

ぱっと見&遠目から見ると黒っぽく、初めは特に何も思わなかったのですが、

 

近づいてカーポートの下に入った時、なんとなく暗さや圧迫感をいつもより感じないことに気がつき、

 

ブラックの門柱と並んでいるのを見た時に、なるほどダスクグレーだったのか〜と気づきました。

黒より明らかに明るく、重たくない色味です。
ほぼ黒に近いダークグレー。

ブラックだとシャープすぎるところを少し馴染み良く、かと言ってぼかしすぎずちゃんと締め色として機能する絶妙なカラーだなと改めて実感しました。

 

3.  セミパブリック向け提案

住宅以外の領域に対しての商品提案は年々増え、重視されているように感じます。

 

超大型のソーラーポートは圧巻。

 

地産材の使用と表記でCO2削減のアピールや、
宅配BOXも戸建用以外に集合住宅向けのものも多く見かけるようになりました。

 

・・・・・・・・・・・・・・・・

 

 

以上、展示を通して大きく見えてきた傾向3つのご紹介でした。

今年は今まで続いてきたトレンドが継続しつつ、少しずつ変化が見て取れた展示だったように思います。会場全体、各部材、素材、色...細かく見ていくと毎年必ず変化はあり、大変興味深いです。

今後も移り変わりに注目しつつ、外観・エクステリアの現在やヒントをお届けできればと思います。

それでは、ここまでお読みいただきありがとうございました。

次回の更新もどうぞお楽しみに。

 

 

 

 

グリーンテラス表参道に行ってきました

 

久しぶりの商業施設レポートとなります。

今回見に行ってきたのは
2025年3月にオープンした「グリーンテラス表参道」

 

表参道駅A1出口を出てすぐ、大通りを1本曲がった住宅地の中に静かに立地しています。

実際に近寄ってみると意外とこぢんまりした建物だな、というのと
テラコッタのようなピンクブラウンと、グリーンが目を惹く外観がとても印象的です。
さすがグリーンテラスなだけあって緑豊か。

 

今回スタッフ2名で現地に行ったのですが、全体を通して
「トレンドっぽい、今っぽいなぁ」と感じる一方、もう1人のスタッフは「昭和っぽくてレトロな感じ、懐かしい感じがある」という感想を持ちました。

 

片や新鮮さを、片や昔っぽさを感じるという、世代差で受ける印象が異なっていたのは興味深いところです。この、「新しくもあり懐かしくもある」という要素自体も、近年の商業施設トレンドとなっている気がします。

 


コーナーには岩や苔、松の木などが配置されていました。
ここだけちょっと和の雰囲気。

 

2階から垂らされた植物には白い花が咲いています。

 

そのグリーンカーテンをくぐって屋根の下に入ると、

やわらかな色で包まれているような感覚。
床、柱、天井に統一感があって、ちょっと特別な場所に来た気分になります。

 

このブロンズカラーの軒が効果的な役割を果たしていそうです。
上品な色味で光沢感もあって、床のピンクっぽい色が写り込んでいます。
普通、影となってしまう軒下空間ですが、明るく包み込まれるように感じるのはこのためですね。

階段下にはベンチを発見。

 

近寄ってみるとテラゾーでした。
石、透明感のあるガラス、キラリと光るのは貝殻...?
プラスチックなども入っているでしょうか、いろいろな素材がミックスされています。

 


ベンチ奥の壁は、コンクリートに塗装。

 

表面はコンクリートの素材感が残っています。穴埋めもしてありますね。
素地が透ける箇所や色むらがあって、それが逆にいい風合いです。
汚れているようにも安っぽくもみえませんし、むしろ上品ささえ感じられる気がするのはあたたかみのある色のためでしょうか。

 

壁や歩道と同じ色味の階段。

 

ベンチのテラゾーも含め、アップサイクルを取り入れており今らしい感じ。


手すりなどに使われている金属をふと見てみると

製造工程で自然につくものでしょうか、スジ?線?が入っていて
単なるキズというよりは少し石目のように見えるものもありました。

 


2,3階はテナント準備中で入れなかったため、地下への階段を降りてみます。

天井にアニメーションが映し出されたアート空間を通り、

広い空間とコーヒショップにたどり着きました。
バリスタ世界チャンピオンの粕谷哲氏が手がけた都内初出店のコーヒーショップだそうなので、コーヒーがお好きな方はぜひ。

私はコーヒーよりもショップ奥の壁、素材が気になりました。
リン酸亜鉛処理の金属板ぽく見えたのですが、だとしたら大柄で面白い柄の出方だし木目との組み合わせも良い雰囲気...いや流石に塗りでしょうか?遠目からだと判断できませんでした。

 

ショップ前には手動で音が鳴るオルゴールや、コーヒーの木が置いてあり、ちょっと足を止めて楽しめる場所となっていました(コーヒーってこんなふうに実がなっているんですね)。



さて、エレベーターで屋上へ。フロア的には5階、景色がひらけて気持ち良いです。

様々な植物、まるで花束が植えてあるみたいです。

 

1階ベンチと同じ、テラゾーのカウンター。
ビー玉なども入っていて、さっきより可愛らしい雰囲気。

これは、鳥居...?

 

と思ったらこの方向に明治神宮があるみたいです。遊び心のあるカウンターですね。

 

 

階段を降りていくと

4階、ジェラートショップです。

 

さっきも使ったエレベーター、ラインが気になるので近づいてみます。

金属のポールでした。
切れ目がないのは本当の竪樋(たてどい)なので、樋隠し&アクセントですね。

コンクリートは黒く塗装&ブラウン系を2種使って馴染み良くしているのも、ポールのランダムな配置や長さも、キツさがなく好ましいです。

 

ジェラートに使う様々な野菜・果物がたくさん栽培されていて、「これ何の野菜??」と見ているだけでも楽しいテラス。

 

店内カウンターはピンクの版築、床は屋外テラス部分と同じテラゾーです。
ここもビル全体同様、色味の統一がされていて感心します。

 

 


今回の施設では、

・同系色のテーマカラー
テラコッタ、ブロンズ、ピンク〜ブラウン、土色、植栽グリーン 、アースカラー

・曲面、カーヴィな造形
→ 螺旋階段、角の取れた柱、壁、軒、カウンターなど、随所がまるい形

この2点で建物全体が綺麗に統一されていて、
色と形の印象がマッチしているのが感じられました。

「優しい形に、あたたかい色味を使う」
「印象が同じもので合わせる」と、
単純に見ていて心地良いですし、よりやさしい印象やナチュラルな感じが強調されるように感じます。

 

またコンパクトな規模感だからこそ店舗数も少なく、施設全体が1つにまとまりよく見えました。たくさんテナントが入っている方が便利ですし見所も多いですが、店舗ごとに内装コンセプトが違ってくるとデザイン的にはごちゃついてきますよね。今回はそういうことがなかったなと。

 

かっこつけすぎず肩肘張らない「自然体」であったり
「居心地の良さ」「コンフォートな空間」が求められるようになっている今、
まさにそういった要素がうかがえるような施設でした。


サッと見て回れるところでしたので、みなさまも近くへお越しの際はぜひ。

またどこか気になる施設へ行った時にはご報告します。次回もどうぞお楽しみに。

 

 

 

 

2025年タイルの新商品探索

 

 


飛石日程のゴールデンウィークでしたが皆様満喫されましたでしょうか。

最近は爽やかな春の季節が短くなってきておりますので梅雨に入る前のこの季節を大切に楽しみたいと思う今日この頃です。

 

さて、春といえばタイルメーカーさんの新商品が出揃う季節でもあります。

今回は先日名古屋モザイクさんのショウルームに行ってまいりましたのでそのご報告です。

 

昨今のタイルにおいて素材や釉薬・インクジェット塗装の技術が飛躍的に進歩しているのは皆様周知の事と思いますが、様々なマテリアルの再現性には驚かされるばかりです。

勿論、至近距離で見れば印刷品特有のドット感や筋などは確認できます。

しかしながら様々なテクノロジーを駆使して、より天然石へと近づいている釉薬の表現とも相まって透過性のある石材特有の質感も感じられるものや、逆に、自然界には本来ない物、例えば異なる石の表情を掛け合わせたものなども素材として違和感がない程度に創作されているなど技アリな感じで非常に参考になりました。

 

柄としては全体的に特徴的な大柄石調のものが多かったように思いますが、色味がおとなしいので使いやすさも兼ね備えた商品群という印象です。

また、左官やコンクリートや金属をインクジェットで表現したものも増えてきたように思います。

 

 

今回は沢山の新商品がある中、特に気になった10商品をご紹介します。

 

マルミマキシマムシリーズ「セレナイト」

粘土の配合や釉薬を素地に浸透させるなどの処理により透明感溢れる表情がリアルなマルミマキシマムシリーズの新商品。

鉱物とガラス質の素材を融合させて結晶感を表現した「ジュエル仕上げ」が美しい商品です。

 

「マーブルラブ」

様々な特徴を持つ数種類の釉薬を融合させる技術を用いたタイル。

奥行きを表現した3Dレイヤリングに高い技術を感じます。



「アイズストン」

大小差のある石が散りばめられたデザインがトレンドを感じます。

 

「グラッシ」

年月を経た漆喰調のデザインです。



「シンビオージ」

コンクリート3種のシリーズ。

「フラット」「テラゾー」「型枠コンクリート」のラインナップです。

 

「シンクロデジット」

石英岩をイメージしたデザイン。

幅のある色差やテクスチャ感が自然な風合いです。

 

「マーシュストン」

カタログに未掲載の商品。

オーソドックスながら完成度の高さを感じる大理石模様です。

 

「フェズリード」

トラバーチンの層に対して垂直に切断するクロスカットをイメージしたデザインです。

 

「コンクリートアート」

セメント素材に着色をしたイメージのインクジェット塗装です。

 

「コンセクティーヴォ」

写真ではちょっと分かりづらいですが幾何学形にはエンボスがあり、そのエンボスとグラフィック塗装が「ピッタリ」と重なっています。

 

どんどん進化していくタイル業界。

もう既にAI技術も取り込まれているのでしょうか。

来年はどんなデザイン・技術が見れるのか今から楽しみです!

 

今回ピックアップした商品のサンプルなど一部取り寄せておりますので、機会がございましたら是非お立ち寄りください。

 

 

 

 

TOKYO MOKUNAVI

お久しぶりです。

2024年最初のレポートは、
昨年9月、新宿のリビングデザインセンター「OZONEに新しくオープンしたスポットのご紹介です。

東京都が運営している場所で、
東京の森林と、とうきょうの木の恵みを感じることができる体験型ショールーム
「TOKYO MOKUNAVI(とうきょうモクナビ)」


主に下記5つのことができるスペースです。

・とうきょうの木製品の展示
・東京の森林・林業について知る
・とうきょうの木や木製品、事業者を紹介
補助金の案内
・イベントやワークショップ開催

 


ここではナビゲーターの方が常駐しているので、いつ訪ねてもとうきょうの木について詳しくお話を聞くことができます。建築関係、メーカーさまはもちろん、一般の来場者さまもちらほら。視界を遮らないオープンな空間なのでふらりと入りやすく、私たちが見ている間にもご夫婦やご家族連れが何組か立ち寄り、興味深そうに展示を見ておられました。


さて、ショールームでまず目に入ってくるのがさまざまな木関連、木製品の展示です。

 

ここにあるのはすべて、とうきょうの木が使われているプロダクト。

今はオープンして最初の展示ということで、用途や種類別にジャンル分けられた木製品の展示がメインでした。屋内外の家具や、

 

玩具/遊具。真ん中の半分に割った丸太のようなものは、叩くと木琴とマリンバの間のような、軽やかで可愛らしい音が鳴る楽器でした。

 

パーティーシーンで役立ちそうなお皿、

 

香りの製品ではヒノキのエアーフレッシュナーをシュッとひと吹きしてもらいました。
生木に近いスッとした香りではなく、ゆずなどの香りも程よくブレンドされてやわらか〜い良い香りです。


それから世界初、木を蒸留して作ったお酒(!)は、東京檜原村産のヒノキとじゃがいもでできているそう。どんな味なのか気になりますね...!


もちろん、建材エリアもありました。



そして建材といえば、空間に使われている木にも注目です。
やはりショールームを構成しているものも全て、とうきょうの木で作られています。

 

まず、空間のゾーンニングにも一役買っている枠組み。

こちらは今回のためにオリジナルで設計されたものだそう。


木と金属。シンプルな構成とパーツで機能的に作られています。

 

角材を平置き( □ )ではなく、45度回転( ◇ )して使っていたり、丸みを帯びた角の処理など、細やかな工夫にオッ!と思いました。


また、こちらの什器はスギ材にクール系のグレー塗装。
表面の木目が透けて見える程度の塗布にとどめているため、木の持つ素材感や節のあるナチュラルさ・カジュアルさは損なわず、しかし色味でモダンなイメージに仕上げてあります。

 

そして足元はスギ材の床です。



こちらも木目が透けるグレー系の塗装なのですが、什器よりも色のバラツキが大きく、より自然な木の質感を感じます。色味もグレイッシュながらあたたかみのあるスモーキーなダーク系で、落ち着いた印象。

 

ライトアップされている箇所と、影になっている箇所でかなり色の見え方が違います。

 

当初この空間は、すべて無垢材(塗装なし)で仕上げる予定だったそうなのですが、「木製品を展示するのに、空間が木の色味ではプロダクトが目立たないので絶対にやめた方が良い」と、担当者の方が床と什器をグレーで塗装する案を推したのだとか。

確かにこの床が明るい生木のような色味だったら、と想像すると
ぐっとトーンダウンしたグレイッシュな床と什器はとても効果的に感じます。「あたたかみのあるナチュラルな木質空間」ではなく「シックで上質な展示空間」の雰囲気を作っているのは間違いなくこの床の色味です。照明の効果も大きく、空間にコントラストがついてドラマティック。狙い通り、陳列物1つ1つも見やすいスペースです。

 



さて、奥に進んだところにあるテーブルペースにあるのも
もちろんとうきょうの木で作られた椅子とテーブル。



デザイン違いで楽しいです。

座り心地を比べていたら、指1,2本でも余裕で持ち上がるくらい軽い椅子がありました。強度のための塗装や処理をしていない椅子なので、これがスギ材本来の重さだそうです。


また、ここの壁面に寄ってみると

初めてみる板材でした。

コルク寄りの木毛セメント?2つのあいのこ?と思ったのですが、コルクほど表面がもそもそしておらずなめらかで、木毛セメントほど大味でなく細かいチップを押し固めたように見えます。

この素材は先ほどの建材エリアに展示されていた製品のひとつでした。

木を薄くスライスする突板の技術を応用した「突板チップボード」です。

色味が明るく、なんとなく若い世代が好みそうな、フレッシュでヘルシーなイメージを受けました。


スペースの背面にあった引き出しにも同じ素材が使われています。

真鍮の把手と木。明るい色味が気持ちの良い組み合わせです。

本当に、細部まで木をふんだんに使用した空間でした。



最後に、テーブルスペースで見せていただいたマップが面白かったのでご紹介を。
マップの緑の部分は東京の森林部です。


西東京や、伊豆諸島、小笠原諸島などの島々からなる東京。
都心・ビル群のイメージが強いですが、その面積の約半分〜1/3 は山や森林です。
それ自体はなんとなく聞いたことがあり知っていたのですが、改めてマップで見ると緑の多さに驚きます。


東京にも森と原木市場があり、伐採、製材、林業が日々行われているのだな、と
木々に関わる方々の情報や商品に触れることで改めて感じられました。

「TOKYO MOKUNAVI」は、一定の期間ごとに展示も入れ替えがあり、立ち寄るたびに新しい情報に触れることができる場所です。

木に関わる情報をお探しの方はぜひ一度、見学されてみてはいかがでしょうか?

東京新スポット「東急歌舞伎町タワー」「虎ノ門ヒルズステーションタワー」

お久しぶりの更新です。

今回は2023年オープンの施設2件の見学レポートです。どちらも注目のスポットなので様々なところで取り上げられていますが、アスカル視点でレポートいたしますのでお付き合いいただけると嬉しいです。

 

東急歌舞伎町タワー

1件目は、今年4月に新宿歌舞伎町にオープンした「東急歌舞伎町タワー」です。

地上48F、地下5Fの国内最大級のエンターテイメントビル。コンセプトは「好きを極める。」

地下にはホールやライブハウス、地上階にはレストラン、ゲームセンターや映画館などのアミューズメント施設、そして最上階にはホテルが入り、ここを拠点に1日中新宿を満喫できる仕様になっています。

まず外観に圧倒されます。

元々この土地に水源があったこと等から、噴き上がる噴水をイメージしたデザインとのことで、低層部分はアーチを組み合わせた形状のアイアンメッシュ、ガラスには白い縁取りが施され、確かにビル自体が空に噴き上がる大きな噴水のようです。

 

アイアンのディティー

 

ガラス部分のあしらいを内側から見る

エントランスを入るとすぐ、日本の祭りをテーマしたエンターテイメントフードホール「新宿カブキHall~歌舞伎横丁」がお出迎え。

極彩色で華やかな空間は、SFやファンタジーの世界に紛れ込んだような錯覚に陥ります。


そんなド派手な空間を横目に、エスカレータで上の階へ。

エスカレータ横の壁面にはランダムに電飾のスリットが施されているのですが、これが反対側に映り込んで、下の歌舞伎横丁の派手な空間と絶妙に溶け込み、浮遊感のある不思議な空間をつくっていました。

このランダムスリットのデザインはいたるところに見られたので、デザインテーマのひとつになっているのかもしれません。

エスカレータ横のメッシュパネルも正面から見るとただのメッシュパネル(左)ですが、斜めから見るとスリット状に光源が!(右)(写真が上手く撮れていなくて申し訳ないのですが‥)

 

こちらはスリットデザインとは少し違うのかもしれませんが、斜めのモノトーンのはけ目柄と、木目柄。それぞれにランダムなアクセントラインが入っています。

このスペースは空港から直行のバスが発着するバスターミナルのエントランス(下)とホテルへのエレベーターホール(上)です。

印象的なアートも飾られていて、エントランス部分の華やかさとは違う独特な迫力ある空間になっていました。

バスターミナル

 

ショップのファサードはネオン管やメタリックを多用し派手な演出が目立つのですが、ネオン管をはじめ、どこかレトロで暖かみを感じるデザインが多いように感じました。一方、映画館やレストランなどはシックで上品なデザインで様々な層へのアプローチを感じました。

 

マテリアルに関してはフラットに近い表面形状に、柄や模様の入ったものがメイン。

木目は所々に使われてはいましたが、一時期より少ない印象です。

使用マテリアル


インバウンドを意識した施設で、実際来客者を見ても海外からの観光客が多くみられました。柄や素材の組み合わせなど全てがコントラスト強めで、情報量がすごいなと感じるところが多々ありましたが、旅行や観光のワクワク感を増すデザインなのかもしれません。

 

 

虎ノ門ヒルズ ステーションタワー

2件目は10月6日にオープンした虎ノ門ヒルズ最後の高層ビル「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」です。

地上49F、地下4F建のステーションタワーは、駅と一体的に開発した複合施設です。

グローバルレベルのオフィス、ハイレベルなホテル、最上部には情報発信拠点「TOKYO NUDE」が開設され、新たなビジネスやイノベーションを世界へ発信する東京の拠点を目指し建設されました。

 

ステーションタワーと虎ノ門ヒルズ森ビル等を結ぶデッキより。

総ガラス張りのシンプルでスタイリッシュな外観です。

 

駅直結。駅の開発も一体的に行なったということで、まずは虎ノ門ヒルズ駅。

プラットホーム、駅構内共にモノトーンで余計な装飾のないのシンプルなデザイン。

そのシンプルな構内に電飾パネルがよく映えます。

そこを抜ければ、虎ノ門ヒルズステーションタワーのエントランスです。

大きな折り返しが続く天井と壁面、そこに上下に浮遊するように構成されたブルーの通路が躍動感ある空間を演出します。

壁面や天井の形状自体は大きな凹凸になっていますが、それを構成するのはフラットで無機質なパネルです。

また、ガラスを多用していて、ガラス面に映り込む形状や色が、空間に奥行きや陰影感を生んでいるように感じました。

 

ステーションタワーで一番印象に残っているのはアクセントカラーの使い方です。

比較的大きな面にアクセントカラーを使い、その空間の雰囲気をつくります。

エントランスはターコイズブルーのアクセントでしたが、ショップ階へ続くエスカレータは赤土のようなレッド。

ショップ階エレベーターホールはメタリックなレッドとイエロー。

まだオープンしていない階もあり、それぞれどんな色なのか気になるところです。

 

TOKYO NODEへ続くエスカレーターは、ライティングや反射でうっすらと金色に見え、その先にはぼんやりと赤い空間が‥この先に何があるのか。と期待感が増す演出です。

エスカレータを上がった先、TOKYO NODEのロビーはシンプルなメタリックの壁面と天井にレッドカーペットが広がります。下から見えた赤い空間は、このレッドカーペットが天井に反射していたのですね。

 

ちなみに、ステーションタワーと森ビルの間に建つグラスタワーのカラーリングはこんな感じです。

ガラス張りの小さな空間に微妙な角度でクロスするエメラルドグリーンのエスカレータ。壁面のオレンジ、空のスカイブルーと相まって爽やかな空間になっています。

 

ステーションタワーに戻って、ショップ街や共有空間のしつらいをご紹介します。

塗調、セメント系石材、メタリックとフラットな素材がメインです。

ショップはこれからオープンする店舗が多いので、どんな店舗が並ぶのか楽しみです。

 

最後に車寄せスペースのご紹介です。

リムジンバスや観光バスにも対応できそうな車寄せ寄スペースです。

屋内がフラットパネルの折り返し天井だったのに対し、半屋外の車寄せはルーバーの天井になっています。風除室でそれが切り替わっているのが面白かったです。(写真左)

 

全体としては、フラットでシンプルな素材を多用し、アクセントは大胆なカラーと素材の透明感や反射を利用した視覚効果。

迫力もあり新しい。でも既視感もある。90年代の建築のリバイバル的要素も感じられるそんな空間でした。

 

まとめと感想

今回レポートした2件は対極のデザインにある施設だと思っていましたが、実際見てみると似ている部分も多く、どちらもインバウンド、グローバルな来訪者を意識し、今の日本を表現・アピールしているように感じました。

主流のマテリアルは、やはりフラットな塗りや金属。ベースカラーは金属質な明るめのグレーが目立ちました。

そこに目を惹くアクセントカラーが加わります。以前は質感のある木などをプラスすることが多かったように思いますが、今回の2件に関しては、質感で見せるよりも、色で魅せるという演出が目立ちました。

このアクセントカラーは、光源や電飾パネルであることも多く、金属や塗調のフラット材が多用されている理由のひとつとして電飾系と相性が良いということがあるかもしれません。

 

また今回、改めて実物を見ることで気づくことも多いと思いました。

外を歩くのも快適な季節になってきました。みなさんもぜひ興味のあるスポットに足を伸ばしてみてください。新しい発見やヒントが待っているかもしれません。

洋菓子のワールドカップ。日本が世界一に!

クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー2023

日本代表チームが使われた木型や道具を、3D技術、
デザインでお手伝いさせていただきました。

 

ここ数ヶ月のMADE in 日本橋での出来事をお知らせ致します。

 

今年1月、フランス、リオンで開催された洋菓子のワールドカップ

クープ・デュ・モンド・ドゥ・ラ・パティスリー
で日本代表が世界一となりましたが、

 

実はMADE in 日本橋でも、大会で使われる木型の制作。
アイスケーキのデザインのお手伝いや、
パティシエさん達が使われる様々な道具を3D技術を駆使しながら
お手伝いさせていただきました。

 

 

最初にご相談いただいたのは大会が始まる半年前、
ここ数年は、フランス、イタリアが3Dの技術を取り入れており、
賞を独占しているので、日本も3Dの技術を取り入れたいということで
今流行りのInstagramを通して知り合い、ご相談を受けました。

 

パティシエさん達の技術、努力の賜物ではありますが、

 

1.型や道具だけが作れる会社でも

2.3Dプリンターだけが使える会社でも

3.デザインだけが作れる会社でも

なく、

 

作り手の思いを汲み取り、上記3つのことができる私たちだからこそ
お手伝い、満足いただき結果へのほんの小さいな力にもなれたのかなと
思っております。

 

常に新しい技術を取り入れ、模様や型を50年作り続けてきた
アスカルの経験、技術力が報われたのかなと思っております。

 

(3Dデータからお菓子の素材まで変える全工程、詳細は内緒です)

 

当社にお越しいただいた方なら、ご覧いただいたことあるかなと思いますが、
当社で作り続けている3Dパターンは現在400を超えています。

今回使用いただいたのは、その中の3つ。
まだまだ私たちができることは多くありそうです。

 

 

 

 

 

 

今回使用したデザインは、建材の業界の中では皆さんも
見慣れたパターンかもしれませんが、
パティシエさんの目からすると斬新で目新しかったようで、

パティシエ界の巨匠。

ピエールエルメさんからも好評だったそうです。

 

日本の物作り、

建材のデザインは、

世界に誇れるクオリティーがあるなと、

 

日々、皆様からご依頼いただき、培ってきた感性、技術があってこそ。

今まで関わられていただいた全ての方のお顔を思い浮かべながら、
その経験あってこそと、とても誇らしい思いです。

 

あくまで私たちの仕事は型という道具作り、黒子ではありますが、
世界のパティシエ界では、有名になりつつあり、、、
次の大会へ向けて準備を進めております。

 

 

3Dで作るパターンを木型という道具へと。
リアルな世界へ出力していますが、

 

メタバース内での建築物への3Dの活用への実験も進めております。

 

デジタルからアナログ(実物)にするにはとても苦労します。

 

今までは原型、型を作り、コストも何百万もかけないと、
建物に表現することができませんでした。

 

でも、デジタルの中で完結できたら、、、、

 

もっと私たちの技術はスムーズに活用いただけそうです。

 

数ヶ月後、数年後かもしれませんが、未来の建物への提案。
また報告できたらと思っております。

 

50年リアルの建物のデザインを考えてきた私達だからこそ、
私達にしか出来ないメタバースの街も彩っていけそうです。

 

 

 

 

今後のMADE in 日本橋のスケジュールのお知らせも!
4月24日から5月24日までの期間。

 

東京新宿のオゾンの中にある「モクション」にて
(全国各地と東京都が連携して行っている国産木材の魅力発信拠点)
隈研吾さんが館長なので、ご存知の方も多いかもしれません。

 

1ヶ月、展示とワークショップをやらせていただきます。

 

一般の方、子供も参加できるワークショップを予定しておりますが、
3D技術を使った、木材の加工、アートパネルなども展示予定なので
ぜひ皆さまお越しください!

 

 

私たちが毎日在中しているわけではありませんので、お越しになられる方、
詳しく説明を聞きたいという方は、ぜひ事前に一報ください。

木材のショールームにて、
木のお話し、建材のお話ができたらと思います。

 

どうぞ引き続き、私たちの活動をお楽しみいただけましたら。
物作りをご一緒できましたら。

 

(株)アスカルデザインプロダクツ 代表 舘野 一也

 

ガラスのクリスマスツリー 今年は「こぎん刺し」デザイン

今年のガラスのクリスマスツリーには、新たに「こぎん刺し」デザインが加わっています。

きっかけは、Made in 日本橋のワークショップで知り合ったこぎん刺し作家さんの<zizi no ie・岡澤さま>からのアドバイスでした。

青森の伝統工芸「こぎん刺し」

こぎん刺しとは、青森県津軽地方の伝統工芸で、日本三大刺し子のひとつで、「モドコ」という基本模様を組み合わせて柄を作っていきます。

・モドコの一部

これら「モドコ」は植物や動物、昆虫、田畑に由来するものが多く、こぎん刺しが暮らしの中から生まれたものであることがうかがえます。

 

現代でも作家さんたちによって、様々な作品に展開されています。

こぎん刺しによる現代の作品/<zizi no ie>岡澤さま

こぎん刺しのパターンを組み合わせて柄をつくっていく作業が通常のデザインワークと通じる部分も多く、また作品を作る要素としてもとても魅力的だと感じ、今年の夏頃からガラスとこぎん刺しを掛け合わせた作品の模索や試作を始めました。

 

方法1)従来通り、耐火石膏に模様をつくりガラスに写しとる。

 

いつものように型をレーザープリンターで作り、石膏型にします。

ガラスを乗せて焼成

しかし、深さが足りなかったのか、柄の出も弱く、点字ブロックのような印象です。

また何より機械的な仕上がりになるのが今回イメージしているものと違い、断念。

方法1で使用した型

 

方法2)ガラスの棒を細かくカットし、こぎん刺し風のガイドに並べて模様をつくる

 

こぎん刺しをイメージしたガイドラインの上に、細く細かいガラスの棒をひとつひとつ並べていくシンプルな方法です。地道で時間のかかる方法ですが、ガラスの歪みや不揃い感があり、作った人それぞれの癖や温もりが仕上がりに表現され、とても温かみのある作品になります。

試作で、去年好評だったガラスのクリスマスツリーを作ってみたところ、制作に時間がかかる分、完成した時の達成感はひとしおで、出来上がりもコラージュのツリーとはまた違ったものになりました。

ガイドラインがあるので、一からデザインを考えなくても良いというメリットもあり、今年のガラスのクリスマスツリーのワークショップに加えることが決定しました。


ガラスのクリスマスツリー ワークショップ

今年は新たに加わったこぎん刺しタイプと、従来の自由にパーツをデザインできるタイプでの開催になりましたが、こぎん刺しタイプの方が半数以上になりました。

こぎん刺しデザインの制作は根気のいる繊細な作業ですが、中には3時間以上かけて制作される方や、小学生の参加もあり、皆さんの集中力や作品に対する思いには感心させられるばかりでした。

どの作品も素晴らしく、今年も世界にひとつだけの最高のクリスマスツリーがたくさん出来ました。

私たちとしては、素晴らしい作品作りのお手伝いをできたこと、そして、日常ではなかなか触れることのない伝統文化を、ワークショップをきっかけに若い方や子どもたちに伝えられたことを嬉しく思います。

 

今後はハンドメイドタイルならぬ、ハンドメイドガラスというか何というか...色々模索しておりますので、期待してお待ちください。

 

最後までお読みいただきありがとうございます。