ascal design にちにちデザイン談

デザイン活動をしながら日々思うことをスタッフやつながる仲間が気ままに綴ります

MADE IN 日本橋、窯始めました

というわけで、今回は新しく導入した窯を使ってみたレポートです!

焼き物に詳しいスタッフがおりますので、試運転を兼ねてチャレンジしていきます。

 

まず焼き物のざっくりとした手順は下記の通り。


1、土で焼きたいものを作る

2、乾燥させる

3、素焼き

4、釉薬を塗る

5、本焼き

 

こんな感じで、2回に分けて焼いていきます。

乾燥や、窯の中の温度が下がるのを待つなど、作業時間以外に待機の時間があるため、全工程終わるまで1週間強のイメージです。

 

 

1、まずは土でテクスチャー作り

 

●シリコンで石肌を転写する

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いつもは石膏や、当社で配合・制作している粘土素材で型取りするところを、土で転写。

「黒泥(こくでい)」という黒っぽい土を使用しています。

造形が甘くなるかと思いましたが、見た感じちゃんと取れていそうです。押し付けた後、すぐに剥がせます。

 

 

●骨材を混ぜてみる

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土に水を入れてペースト状に。さらに、左官などに入っている骨材を混ぜこんでみました。

いつもの粘土素材は骨材を混ぜるとザラついた表面の仕上がりになるのですが、焼き物ではどうなるでしょう。

 

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比較のために骨材あり(左)と、なし(右)のパターン、両方作ります。

 

 

●木型

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土が張り付いてしまわないかと思いましたが、綺麗に剥がれてくれました。

また、エッジが丸くて木型で見るより可愛らしい印象です!

 

 

●ローラーで跡をつける

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他にも、3Dプリンターで作ったローラーで表面に模様をつけてみたり、

 

 

●その他の道具でテクスチャー作り

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布・スプーン・定規など、いろいろなもので土を加工・テクスチャーを施してみます。

こちらは先ほどより明るくベージュっぽい「多治見土(たじみつち)」を使用。

 

よく弊社で使う「くしびき」の手法は、エッジがシャープなものはうまく引けませんでした。角が丸いものは形が出やすくきちんと引けました。

 

このように作っていって、

 

 

2、乾燥させる と、こんな感じに!

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乾燥時間は1日半くらいでしょうか。

全体的に水分が飛んで、1段色が明るくなっています。

また、乾燥の過程でどうしても反りやヒビ、少し崩れたりしたものも見られます。

 

 

3、素焼き

さて、次は1回目の窯、「素焼き」です!

比較的低温で焼いて、水分や不純物を飛ばす工程です。

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乾燥したのもはくっついたりしないので、重ねてしまってもOK。

棚板を立てて、作ったものを全部入れます。

 

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これで、700度の素焼きプログラムをセットしてボタンを押せば、6時間かけて窯が自動で温度を上げてくれます。なんと便利。エアコンのタイマーと変わりない簡単操作です。

これが金曜の夕方だったので、週明けには出来上がっているはずです。

 

 

 

〜そして月曜日〜

 

 

 

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色が変わりました!

黒泥のグレーはさらに明るく、ベージュっぽかった多治見土は オレンジ色に。

タイルの色名なんかでよく聞きますが、これが本当の「テラコッタ(=素焼き)」ですね。

 

 


4、釉薬を塗る

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このとろみのある液体が釉薬です。ガラス質の粉などが主成分。

今はグレーですが、焼くと緑がかった色になるそう。また、釉薬は狙った色を出すための配合が難しいのだとか。

 

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刷毛で一部表面に塗ったり、掠れさせたり、浸けたりして釉薬の塗布完了です。

こちらは土の乾燥とは違って、半日ほどですぐ乾いてくれました。



5、本焼き

 いよいよ最後の段階です。
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 本焼きは素焼きと違い、1230度の高温で焼きしめていきます。

窯の稼動時間としては8-9時間ですが、1230度にまで上がった窯の中の温度が冷めてからでないと扉は開けられないので、焼きあがった後も1-2日待つ時間が必要です。

 

 

〜そして焼き上がり〜 

 

 

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できたものを見ていきます!

 

 

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多治見土はこんなに色が変わりました。

触った感じ、表面の質感も、素焼きの方は粉っぽくやわらかいのに対して、本焼きはしっかりざらっとした焼き物の手触りです。

 

 

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同じ黒泥で、骨材有無の比較。骨材を入れた方は茶色っぽくなりました!

また骨材のザラザラした粒が燃えて無くならずに残っています。

 

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ただ、骨材ありの方は全体的にヒビが入りやすいようです。ペースト状で水分が多いので乾燥の段階でそうなるのか、骨材を入れたことが原因なのか...

 

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しかしヒビや割れが入ったことで焼き物らしく良い雰囲気の表情になったものもあるので、割れがマッチするテクスチャーを考えていけると良いのかもしれません。

 

 

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型と、焼き上げたものの大きさ比較。一回り縮むのは知っていましたが、土によって縮小比率もだいぶ違います。黒泥や磁器の土は特に小さくなりがち。

 

 

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表面の反りは、流し込んだものの方が若干ですが、抑えられている印象。

 

 

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こちらはシリコンで転写した、同じテクスチャーです。

すぐに剥がした方はちょっと造形が甘くなっています。きちんと乾燥してから剥がす方が、正確な造形を写し取れそうです。

 

 

  

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跡をつけて作ったテクスチャーはしっかり形が出ている印象。

特に左下は焼き物ならではのガサつき感で石膏や転写では出ない表情です。

 

 

 

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 そしてこちらが釉薬をかけたもの。全体的に綺麗な青になっています!

ただ、本来緑っぽくなる釉薬を使ったので、焼き物に詳しいスタッフは「なぜ?!」と若干困惑気味でした...この色自体はすごく綺麗ですが!

 

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 本来、右の丸いものの色味が一番狙った色に近いようです。温度が要因か、釉薬の厚みが要因か...やっぱり調整は難しそうです...

 

 

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近くで見ると光沢感があって、金属っぽくも見えたり、薄くかすれて釉薬がかかった部分はシルバーっぽい色味でもあったり、

 

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溝や厚く盛ったところは釉薬が溜まって深い色になっています。

また、釉薬と土の部分のキワに、赤茶っぽく焦げたような跡が見えますが、これは「緋色(ひいろ)」と言って、土の中にある鉄分が引っ張り出されて偶発的に出てくる色なんだそうです。

調整できない要素があるのは一つ一つ味が出て面白いですね!

 

 

 

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以上、まずは窯で何ができるか探ってみたレポートでした!

 

今回はテクスチャーメインでの制作でしたが、いつもの素材や造形を焼き物に変換するのはかなり新鮮でした。今後、他にもできることはたくさんあると思うので、新しいものづくりに挑戦していければと思います。

今後の続報もお楽しみに!

 

 

また、今現在「MADE  in 日本橋」では、操作に慣れている方・経験のある方にはこの窯の貸し出しも行っております。

もしご興味ある方いらっしゃいましたら、ぜひお気軽にご相談くださいませ!