ascal design にちにちデザイン談

デザイン活動をしながら日々思うことをスタッフやつながる仲間が気ままに綴ります

東京新スポット「東急歌舞伎町タワー」「虎ノ門ヒルズステーションタワー」

お久しぶりの更新です。

今回は2023年オープンの施設2件の見学レポートです。どちらも注目のスポットなので様々なところで取り上げられていますが、アスカル視点でレポートいたしますのでお付き合いいただけると嬉しいです。

 

東急歌舞伎町タワー

1件目は、今年4月に新宿歌舞伎町にオープンした「東急歌舞伎町タワー」です。

地上48F、地下5Fの国内最大級のエンターテイメントビル。コンセプトは「好きを極める。」

地下にはホールやライブハウス、地上階にはレストラン、ゲームセンターや映画館などのアミューズメント施設、そして最上階にはホテルが入り、ここを拠点に1日中新宿を満喫できる仕様になっています。

まず外観に圧倒されます。

元々この土地に水源があったこと等から、噴き上がる噴水をイメージしたデザインとのことで、低層部分はアーチを組み合わせた形状のアイアンメッシュ、ガラスには白い縁取りが施され、確かにビル自体が空に噴き上がる大きな噴水のようです。

 

アイアンのディティー

 

ガラス部分のあしらいを内側から見る

エントランスを入るとすぐ、日本の祭りをテーマしたエンターテイメントフードホール「新宿カブキHall~歌舞伎横丁」がお出迎え。

極彩色で華やかな空間は、SFやファンタジーの世界に紛れ込んだような錯覚に陥ります。


そんなド派手な空間を横目に、エスカレータで上の階へ。

エスカレータ横の壁面にはランダムに電飾のスリットが施されているのですが、これが反対側に映り込んで、下の歌舞伎横丁の派手な空間と絶妙に溶け込み、浮遊感のある不思議な空間をつくっていました。

このランダムスリットのデザインはいたるところに見られたので、デザインテーマのひとつになっているのかもしれません。

エスカレータ横のメッシュパネルも正面から見るとただのメッシュパネル(左)ですが、斜めから見るとスリット状に光源が!(右)(写真が上手く撮れていなくて申し訳ないのですが‥)

 

こちらはスリットデザインとは少し違うのかもしれませんが、斜めのモノトーンのはけ目柄と、木目柄。それぞれにランダムなアクセントラインが入っています。

このスペースは空港から直行のバスが発着するバスターミナルのエントランス(下)とホテルへのエレベーターホール(上)です。

印象的なアートも飾られていて、エントランス部分の華やかさとは違う独特な迫力ある空間になっていました。

バスターミナル

 

ショップのファサードはネオン管やメタリックを多用し派手な演出が目立つのですが、ネオン管をはじめ、どこかレトロで暖かみを感じるデザインが多いように感じました。一方、映画館やレストランなどはシックで上品なデザインで様々な層へのアプローチを感じました。

 

マテリアルに関してはフラットに近い表面形状に、柄や模様の入ったものがメイン。

木目は所々に使われてはいましたが、一時期より少ない印象です。

使用マテリアル


インバウンドを意識した施設で、実際来客者を見ても海外からの観光客が多くみられました。柄や素材の組み合わせなど全てがコントラスト強めで、情報量がすごいなと感じるところが多々ありましたが、旅行や観光のワクワク感を増すデザインなのかもしれません。

 

 

虎ノ門ヒルズ ステーションタワー

2件目は10月6日にオープンした虎ノ門ヒルズ最後の高層ビル「虎ノ門ヒルズ ステーションタワー」です。

地上49F、地下4F建のステーションタワーは、駅と一体的に開発した複合施設です。

グローバルレベルのオフィス、ハイレベルなホテル、最上部には情報発信拠点「TOKYO NUDE」が開設され、新たなビジネスやイノベーションを世界へ発信する東京の拠点を目指し建設されました。

 

ステーションタワーと虎ノ門ヒルズ森ビル等を結ぶデッキより。

総ガラス張りのシンプルでスタイリッシュな外観です。

 

駅直結。駅の開発も一体的に行なったということで、まずは虎ノ門ヒルズ駅。

プラットホーム、駅構内共にモノトーンで余計な装飾のないのシンプルなデザイン。

そのシンプルな構内に電飾パネルがよく映えます。

そこを抜ければ、虎ノ門ヒルズステーションタワーのエントランスです。

大きな折り返しが続く天井と壁面、そこに上下に浮遊するように構成されたブルーの通路が躍動感ある空間を演出します。

壁面や天井の形状自体は大きな凹凸になっていますが、それを構成するのはフラットで無機質なパネルです。

また、ガラスを多用していて、ガラス面に映り込む形状や色が、空間に奥行きや陰影感を生んでいるように感じました。

 

ステーションタワーで一番印象に残っているのはアクセントカラーの使い方です。

比較的大きな面にアクセントカラーを使い、その空間の雰囲気をつくります。

エントランスはターコイズブルーのアクセントでしたが、ショップ階へ続くエスカレータは赤土のようなレッド。

ショップ階エレベーターホールはメタリックなレッドとイエロー。

まだオープンしていない階もあり、それぞれどんな色なのか気になるところです。

 

TOKYO NODEへ続くエスカレーターは、ライティングや反射でうっすらと金色に見え、その先にはぼんやりと赤い空間が‥この先に何があるのか。と期待感が増す演出です。

エスカレータを上がった先、TOKYO NODEのロビーはシンプルなメタリックの壁面と天井にレッドカーペットが広がります。下から見えた赤い空間は、このレッドカーペットが天井に反射していたのですね。

 

ちなみに、ステーションタワーと森ビルの間に建つグラスタワーのカラーリングはこんな感じです。

ガラス張りの小さな空間に微妙な角度でクロスするエメラルドグリーンのエスカレータ。壁面のオレンジ、空のスカイブルーと相まって爽やかな空間になっています。

 

ステーションタワーに戻って、ショップ街や共有空間のしつらいをご紹介します。

塗調、セメント系石材、メタリックとフラットな素材がメインです。

ショップはこれからオープンする店舗が多いので、どんな店舗が並ぶのか楽しみです。

 

最後に車寄せスペースのご紹介です。

リムジンバスや観光バスにも対応できそうな車寄せ寄スペースです。

屋内がフラットパネルの折り返し天井だったのに対し、半屋外の車寄せはルーバーの天井になっています。風除室でそれが切り替わっているのが面白かったです。(写真左)

 

全体としては、フラットでシンプルな素材を多用し、アクセントは大胆なカラーと素材の透明感や反射を利用した視覚効果。

迫力もあり新しい。でも既視感もある。90年代の建築のリバイバル的要素も感じられるそんな空間でした。

 

まとめと感想

今回レポートした2件は対極のデザインにある施設だと思っていましたが、実際見てみると似ている部分も多く、どちらもインバウンド、グローバルな来訪者を意識し、今の日本を表現・アピールしているように感じました。

主流のマテリアルは、やはりフラットな塗りや金属。ベースカラーは金属質な明るめのグレーが目立ちました。

そこに目を惹くアクセントカラーが加わります。以前は質感のある木などをプラスすることが多かったように思いますが、今回の2件に関しては、質感で見せるよりも、色で魅せるという演出が目立ちました。

このアクセントカラーは、光源や電飾パネルであることも多く、金属や塗調のフラット材が多用されている理由のひとつとして電飾系と相性が良いということがあるかもしれません。

 

また今回、改めて実物を見ることで気づくことも多いと思いました。

外を歩くのも快適な季節になってきました。みなさんもぜひ興味のあるスポットに足を伸ばしてみてください。新しい発見やヒントが待っているかもしれません。